ドクターコラム

神経回路への電気刺激で認知症の改善、予防につながる可能性
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電気刺激による神経回路の発達、改善の事例

神経回路って何か?
脳の機能とどう関係するのか?

「ダウン症に対する電気刺激の効果に関する示唆」で記載した通り、「電流刺激によってダウン症児の神経回路に何が起こったか?」と考えたとき、鍋倉淳一先生の研究が参考になった(1)。
まず、神経回路について説明したいが、鍋倉淳一先生の書かれた文献は難解なのでもう少し理解しやすいように神経回路を説明している文献を紹介する(2)。

神経細胞が連なっているのが神経回路であるが、ここでそれを少し詳しく紹介しておく。
末梢から入ってくる感覚刺激は電気信号に変えられ、目的の神経細胞に伝えられそこで感覚として感じられる(求心性刺激)。brまた、末梢の筋肉を収縮すると決定をした神経細胞から電気信号が神経を介して末梢の筋組織に伝えられ(遠心性刺激)、目的の筋組織が収縮する。中枢神経組織では、神経細胞が軸索末端を他の神経細胞の樹状突起に連結させ、シナプスを形成している(図1、図2右上段、右下段のイラスト)。神経細胞同志が軸索末端と樹状突起でいろいろな連結を形成して複雑なネットワーク(神経回路:ニューラルネットワーク)を形成する。このネットワークは複雑で、でたらめなように連結されているように見えるが、神経細胞から神経細胞へと伝わる電気信号は特定の神経回路を確実に伝播する(図2右下段イラスト)。
ここで注意しなければならないのが、神経細胞を情報伝達するのが、電気信号であることである。
電気信号によりシナプス間で放出される神経伝達物質が何であれ、電気信号が末梢から中枢、中枢から末梢に神経回路を伝わることで、動物では、感覚が保たれ、運動を行うことができる。

図1.神経回路

中枢神経組織では、神経細胞が軸索末端を他の神経細胞の樹状突起に連結させ、シナプスを形成している。神経細胞同志が軸索末端と樹状突起でいろいろな連結を形成して複雑なネットワーク(神経回路:ニューラルネットワーク)を形成する。

図2.神経回路の再編成
(参考文献2;ニュートン2010年3月号24頁からニュートンプレスの許可を得て転載)

図2の上段右イラストは乳幼児の未熟な神経回路を表している。電気信号が伝わって興奮した細胞は桃色、黄色で示してあり、電気信号が伝わらなかった細胞は黒色で示している。

未熟な神経回路では一つの電気信号入力に対して多くの神経細胞がつながっているので多くの神経細胞に電気信号が伝わって、出力されてしまい、目的の神経細胞だけに正確に電気信号が伝わらない。図2上段左のイラストでは未熟な神経回路をもつ幼児を示すが、幼児の手は神経回路が未熟なためおおざっぱな動きしかできない。図2の下段右イラストでは成熟した神経回路(4歳)を示す。余分な神経回路が働かなくなり、一つの電気信号の入力に対して必要な出力だけが行われ、電気信号は目的の神経細胞にだけ伝わる。図2下段左のイラストはこれを具体的に表している。神経回路が未熟な神経回路から成熟した神経回路に再編されると手を細かく動かせるようになる。

別の例を示せば、乳幼児(1歳未満)では末梢感覚器からの痛覚刺激が温度感覚(冷たい、暑い)の神経細胞にも伝わるので、末梢感覚が鈍感になってしまい、鋭敏に痛みだけを痛みとして認知されないが、4歳ごろになると痛みは痛みとしてのみ感じられるようになる。 前述したようにある発達障害児では低周波電気刺激前には左右同時にしか太鼓がたたけなかったが、低周波電気刺激後には右手、左手を交互に使い、太鼓をたたけるようになった。
この観察結果は低周波電気刺激で左右の上肢の太鼓をたたくという神経回路が以前よりも成熟したことを意味しており、また、発達障害児では未熟な神経回路が成熟せずに存続していることが発達障害の原因となっていると考えられた。
我々は末梢神経からの電気刺激で未熟な神経回路が成熟した神経回路にかわる”神経回路の再編”を治療の方法として採用して、電気刺激を改良・進歩させて新たな電流刺激治療法を開発した。

顔面微弱電流刺激装置と
以前からある脳の電気刺激装置との違い

我々は成熟な神経回路が未熟な神経回路に変化することで発生する脳機能障害を顔面微弱電流刺激(Facial Microcurrent Stimulation;以下MCTと略す)で治療できることを提唱する(4)。

MCTは在宅で行える治療法として世界で唯一のものであり、現在のところ国内ではダウン症などの発達障害の治療で良い成績を上げている。具体的に数例を提示する。ダウン症の10歳の男子ではMCT治療開始後1か月で自分以外の人の名前を書けるようになり、「自分の手足を書こう」という授業では以前は腕、脚がなく服から手足が出た絵しか描けなかったが、MCT治療2か月で腕、脚を描くようになった。
また、以前は字を書くときなぞり書きしかできなかったが、お手本を見て書くようになった。
最近は時々はっきりとした発音で話すことがある。11歳の広汎性発達障害の男子で、言語理解が著しく劣り、多動症を合併していたが、3か月のMCT治療で多動が消失し、漢字の読み書きの能力が徐々に向上しつつある。54歳の障害のない男性で、特定の単語について記憶が維持できなくなり、物忘れがだんだん進行してきたが、MCT治療1か月で特定の単語について記憶が維持できるようになり、物忘れの進行も止まった。

MCTのように電流刺激で脳機能の障害や精神疾患を治療する試みはかなり以前から行われている。
よく知られた方法は電気けいれん療法であるが(4)、最近は修正型電気けいれん療法となり、全身麻酔下に安全に行われるようになったが、入院が必要で、発達障害児も含め気軽に行えるものではない。
日本では未だあまり知られてはいないが、経頭蓋磁気刺激法がある(5)。これは磁気を脳に与え、磁気強度を変化させることにより磁場を変化させ、電子の流れを誘導する電磁誘導(ファラディーの法則)を利用したものであるが、どのような精神疾患に適用するかも議論の余地があり、また、1回の治療に時間が掛かり、ほぼ毎日病院に通わなければならないなど在宅での治療ができない。

さらに、機器も高価であり、日本では未だ未承認の機器であるため、使用しているところが少なく、仮に治療できたとしても高額な治療費が必要となる。最近発達してきた治療法として脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation; DBS)がある(6)。これは何らかの病変により、脳の一部が機能不全を起こしている患者の脳に適切な電気的または磁気的刺激を継続的に送りこむ方法である。

具体的には心臓ペースメーカに似た植込み装置を脳深部に埋め込み、電気刺激を行うことによって、症状の改善を図る治療法であり、大学付属病院の脳神経外科などで治療に用いられており、在宅で簡単に行えるものではない。
これらの機器に対して我々の開発したMCTは比較的装置が安価であり、在宅で行え、操作も簡単である。通電時間は15分であり、手術など必要とせず、高価なメンテナンスもいらない。

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